日々のこと

2021/04/24

「美しい花図鑑」”レシピ提供”につきまして

「美しい花図鑑」”レシピ提供”につきまして

本来であれば「嬉しいお知らせです」と言いたいところなのですが…。

残念ながら、今回は納得しがたいことが多々あり、素直にお知らせすることができません。

 

年始のご挨拶でもちらっと触れましたが、年末年始、刺しゅう糸を編んで「できるだけ細部にこだわったリアルな」作品に取り組んでおりました。

「刺しゅう糸で編むかぎ針編み 美しい花図鑑」レシピ提供のお仕事であり、4月30日に発売の予定です。

 

今回、原稿を仕上げてお送りした後、校正はおろか確認の機会さえも一切いただけませんでした。

編み図やその他の図はトレースしたものとなりますし、説明も「原稿そのまま」ということはないので、ふつうなら制作者のチェックは欠かせないはずです。しかしなぜか今回は確認の依頼がなく、問い合わせすら一切なく、不審に思って連絡してみたら、「もう終わった」と言われてしまったのでした。

その上、こちらの同意もなく、材料の一部が変更されていました。

作品写真に掲載されているものは、当然わたしが制作したそのままですが、違う材料、チェックしていない作り方説明では、同じものができあがるか疑問です。

デザイン・制作はChi・Chiとなっていますが、同意もなく改変されてしまってはレシピに責任を負いかねます。制作者のわたしに対しても、読者の方に対しても不誠実なのではないでしょうか。

 

 

経緯についてお話しさせていただきます。

1月半ば、作品の作り方原稿(手書き)を仕上げてお送りした後、当然あれこれとお問い合わせがあるものと思っていました。ていねいに書いたつもりの原稿ですが、不備は必ずあるし、他の人が読んで分かりにくいところもあるはずだからです。

ところがいっこうに連絡はありませんでした。ふしぎに思いましたが、はじめての美術展やてづバなど、忙しさにかまけてしまったのでした。

少し落ち着いて、何の連絡もないことが気になりました。時期的にはそろそろ校正の依頼があるはず。…しかし、そういえば今回は事前にそんな話は出なかったのでした。…それにしても、写真で説明する部分もあるだろうし、確認やチェックの機会はあるはず…。しかし、やはり連絡は来ませんでした。

 

「野の花コサージュ」のときは、原稿を渡した後、編集者さんから編み方や説明の分かりづらいところなどこまごまとしたお問い合わせがあり、それから作り方ページ・写真説明などの叩き台(いわゆるゲラですね)が送られてきて、編集者さんたちもチェックしますが、わたしもチェックします。訂正したものが仕上がると、もちろんそれもチェックさせていただきます。作品写真、添えられた文章などについてもチェックの機会をいただきます。

「野の花コサージュ」は著者本なので手厚かったところはありますが…。作った本人しか分かっていない部分もあるし、ミスも必ず出てくるので、何人もの目で、何重にもチェックします。校正の目は多いほうが良いのです。

それでも、見落としていた部分がいくつもあり、第2版が出たときに訂正させていただきました。(それでもまだ見落としがあり、お客さまにご指摘いただいたのですが、まだ訂正できていません…。申し訳ないことです。)

 

いいかげん不審に思ったので、こちらから連絡を取りました。

そして、「校正・確認はこちらでもうした」と言われてしまったのでした。

 

ぐずぐず思い悩まずにもっと早く連絡するべきだったのでしょう。

どうしようもなかったので、見本書籍が届くのを待ちました。

 

レシピ提供者には見本として発売日の少し前に1冊贈呈されます。

作品の返却とともに届いたので、さっそく確認しました。

編み図や説明、図など概ね原稿どおりの内容ではあるのですが、解釈違いや勘違い、理解できない部分をふわっと似たような感じにしたものの意味不明になっている図、図と違う写真説明や添えられた文章など、「…???」となる部分も散見されました。

しかし、そんなことが全部どうでも良くなるくらい衝撃だったのは、材料のステンレス製のカラーワイヤーがフラワー用ワイヤー(地巻きワイヤーのことだと思います)に変更されてしまっていたことでした。

 

Chi・Chiは基本的に地巻きワイヤーを使いません。(リース土台の芯くらいです。)

あまりなじみがないせいもありますが…。太めで硬いし、紙まで巻いてあって、細い糸を使った繊細な表現にはまるで向いていないと思うからです。(ときどきもっと細いワイヤーが欲しくなるくらいです。)

ビーズ細工用のステンレス製のワイヤーなら、曲げ伸ばししても丈夫だし、仕上げに糊をかけてびしょびしょにしても平気だし、錆びる心配もありません。

今回も、刺しゅう糸の3本取り・2本取りで編み、小さな花の細かい表現も多く、当然のようにいつもの#30のステンレス製ワイヤー(太さ0.3mm)を使用したのでした。

それが地巻きワイヤーに変更されていました。

 

慌てて問い合わせたところ、どうも他の作家さんがたとの兼ね合い、ということのようでした。

 

ステンレス製カラーワイヤーを使用するにあたっては、事前に編集者さんに確認を取っています。

あまり一般的ではないようだし、使ってもいい材料なのか、心配だったからです。

デザイン・制作に取りかかる前に、ビーズ細工用ステンレス製カラーワイヤー#30(TOHOさんのです)を使用するつもりである旨お伝えしたところ、「ワイヤーの件承知しました」とお返事をいただいたので、安心して使用したのでした。

不都合なのであれば、そのときに伝えていただいていれば、地巻きワイヤーに挑戦してみるなりワイヤーを使わないデザインで制作するなり、わたしもいくらでも対応できたはずなのです。

方針が変わったのであればそのときにご連絡いただいても良かったはずです。

それなのに、一言もなく一方的に変更されていたのでした。

 

わたし自身は地巻きワイヤーをほとんど使ったことがありませんし、同じ番手のものは今手もとにないので、検証することもできないのですが、同じものが同じように出来上がるか、はなはだ疑問です。

素材も違いますし、硬さや弾力も違います。細い糸で、滑りの良いステンレスワイヤーを使ったレシピと同じように作れば、作りにくいところも出てくるでしょう。

そうしたことの一切を検証する機会もなかったのです。デザイン・制作はChi・Chiとなっていますが、わたしはこのレシピに責任を負うことができません。

 

…そういえば、去年も似たようなことがあったのでした。

使っていいか不安な材料があり、何度か確認して大丈夫ということだったので、安心して使ったら作品と原稿ができあがったあとでやっぱり駄目だから作り直してくれと言われたのです。

そのときは突っぱねて、その材料で通してもらったのですが。

そのときとは違う人でしたが…。向こうの言う「承知しました」や「大丈夫です」は信用してはいけないのですね。学習能力がないのはわたしのほうだったのかも。

 

本来であれば、地巻きワイヤーで同じ作品が作れるか検証し、作りづらいようであれば改良し、増刷の際にでも書き換えてもらう、というのがあるべき社会人としての姿なのかもしれません。

しかし、心が折れました。

読者のかたにはたいへん申し訳ないことですが…。相手が不実の限りを尽くしているというのに、なぜこちらが誠心誠意対応しなければならないのか。

わたしはもう、金輪際、E&Gクリエイツとかかわりを持ちたくありません。

今後一切、です。

「美しい花図鑑」のレシピに対しても、責任を持てません。ざっと見たところ編み図はだいたい合っているようなので、「野の花コサージュ」をお持ちのかたは作れるのではないかと思います。無責任な言いようですが…。

今回の仕事を引き受けたのがそもそもの間違いでした。

楽しみにしてくださったかたには…。申し訳ありません。不徳の致すところですm(_ _)m

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